【団体紹介】AMAサポーターズ倶楽部
かつてサッポロビールの工場と、製麻工場があった北8条通東側地区。AMAサポーターズ倶楽部は、この通りを、まちの歴史にちなむ亜麻(アマ)の花と、ビールの原料となるホップで飾っています。発足の経緯や活動内容について、代表の走川貴美(はしりかわよしみ)さんに、お話を伺いました。
(文責:都築仁美)
フラワーロードができるまで
札幌市内を走る北8条通りには、春から秋にかけて、涼しげなアマの青い花と、淡い緑色の毬のような花を咲かせるホップを中心とした植物でにぎわう場所があります。「アマとホップのフラワーロード(以下、フラワーロード)」と呼ばれるその通りには、歩道に沿って、「植樹ます」ならぬ、「植樹帯」が連なっており、AMAサポーターズ倶楽部のメンバーや、周辺企業、町内会の人たちが花の手入れをしています。
2003年までは、この周辺は草ぼうぼうの殺風景な景色でした。AMAサポーターズ倶楽部の代表を務める走川さんの働きかけがきっかけとなって、フラワーロードは生まれました。
50年以上、札幌市東区で暮らす走川さん。「地域にお返しがしたい、何か出来ることがないだろうか、と考えた時に、花があった」といいます。
走川さんは幼いころ、農業引退後に花づくりに携わっていたおじいさんを質問攻めにして、花の名前や育て方などを教えてもらいました。そして、札幌に越してきた10歳の時に、半径1mくらいの自分専用の丸い花畑をお父さんにつくってもらったそうです。
「自分で種を蒔いて、自分で水をやって。その花を摘んで家の中に飾るのが、10歳にして趣味だったの。」
学校を卒業したのちは、2年間のOL生活、洋服のデザインや料理の勉強と、紆余曲折を経て、フラワーデザインに出会います。花が仕事になったのです。

AMAサポーターズ倶楽部の発足前、走川さんは、「東区花トピアコンクール」の審査員を務めていました。区の職員と一緒に、個人宅や学校、企業の花壇、街路ますを見て回り、街路ますが草ぼうぼうであることが気になりました。機会を見つけては、「街路ますを何とかしましょうよ」と市の職員に幾度となく働きかけていましたが、改善される気配はありません。
2003年の夏祭りの際、区の職員たちと偶然に顔を合わせた走川さんは、あらためて街路ますの話をします。職員からは「走川さん、やってよ。協力するから」の声。そして、まずは10名ほどの仲間に呼びかけて東区役所の花壇への植栽。2004年からは、北8条通り沿いの植樹帯が、東区によって準備されます。10名くらいでは、管理できるスペースではありません。
一緒に取り組んでくれる人を募ろうとしていたときに、北海道新聞に紹介されました。記事が掲載されたのはお正月明けの1月8日。走川さん宅の電話は鳴り続けました。50件くらいの協力を申し出る電話があり、3月に行った説明会には100名もの人が集まりました。フラワーロードづくりがいよいよスタートします。
みんなでつくるフラワーロード
現在、AMAサポーターズ倶楽部には、アマを種から苗へと育ててくれる育ての親が約300名、月1回のフラワーロードのメンテナンスに携わってくれるサポーターが約160名(重複あり)、活動を引っ張っていくリーダーが20名程います。年齢は10歳代?80歳代までと幅広く、親子や夫婦で参加してくれる人もいます。
メンテナンスの作業には、毎回少ない時で20名、多い時で50名くらいの人が参加します。
「雑草と花の違いがわかる人は草むしり、花に詳しくない人でも、たとえば街路帯のゴミ拾いをしてくれるととても助かる。ホップの管理には、背の高い人が必要だし、必要事項を伝達してくれる受付係も大事。みんながそれぞれの役割の中で、創意工夫をして取り組んでいてくれる」と走川さん。
関心を持つ人ならだれでも受け入れるという懐の広さを感じます。
情報伝達のために、ホームページを活用するほか、携帯電話を使ってメールマガジンを送ったり、年1回AMA通信を発行したりしています。また、交流のために、スノーキャンドルや、自ビール、リースづくり、視察旅行など、楽しむ工夫もしています。
AMAサポーターズ倶楽部には、アマの育ての親や、サポーター以外にも、たくさんの協力者がいます。たとえば、北8条通り沿いにあるサッポロビールやアリオといった企業です。活動の際に場所を提供してくれたり、マイクなど必要機材を貸してくれます。メンテナンスにも一緒に参加します。現在では、10を超える企業が協力しているそうです。近隣の町内会もフラワーロードづくりに参加しています。
活動に必要な費用をねん出するために、毎年6月頃にアマ&ホップフェスティバルを開催して、宿根草バザーを行っていますが、苗や種を安く提供してくれる生産者の方々もいます。バザーの品物を買いに来てくれる人たちもいます。このような人たちがみんな、フラワーロードづくりに関わっているのです。

==エルミタージュのこと==
AMAサポーターズ倶楽部の拠点となるような場所をつくりたい、庭をつくりたいと考えていた走川さん。長沼町の「リストランテ・クレス」で沈む夕陽を眺め、「こんなところに庭をつくりたい」とオーナーに話したのが4?5年前。
そして、2年前の2007年10月、クレスのオーナーから「施設入所を控えたおとなりのお婆ちゃんが、庭を大事にしてくれる人に土地を譲りたいといっている」、という連絡が入ります。
1週間後には、長沼にその家を見に行きました。家と納屋と庭がある740坪くらいの土地です。庭の真ん中には築山があって、周囲を見渡せます。30分で購入を決めました。
AMAサポーターズ倶楽部の仲間に声をかけて、雪が降る前に急いで球根を植え、庭の写真をとって、寸法を測りました。冬の間に図面をひき、次年のゴールデンウィークに、みんなでレンガを敷いたり、土を起こしたり。いまでは、バーベキューが出来るような、パティオもあり、野菜畑もあります。エルミタージュ(フランス語で「隠れ家」の意)と名付けました。
土地を譲ってくれたお婆ちゃんや、親類の人たちが時々たずねて、庭を眺めていきます。お婆ちゃんにとっては、お爺ちゃんが丹精込めてつくった大切な庭。お爺ちゃんが植えた桜やモミジ、ツツジなどの樹木がいまも残っています。お婆ちゃんは「いい人でよかった」と喜んでくれているそうです。
A MAサポーターズ倶楽部の仲間たちは、一緒に作業したりすることもあれば、お茶を飲みに来ることも。クレスのお客さんが立ち寄ってくれることもあります。「花の道」は、人のつながりを通じてどんどんと伸びて行くようです。
AMAサポーターズ倶楽部
代表:走川貴美(はしりかわ よしみ)
ホームページ:http://homepage2.nifty.com/linum