【団体紹介】新琴似六番通街づくりクラブ
10月14日、「新琴似六番通街づくりクラブ」を訪問し、アドバイザーの秋山忠継さんにお話を伺ってきました。お話の内容をまとめましたので、ぜひご覧ください。
(文責:都築仁美)
防風林の「発見」
北区新琴似六番通を拠点とする「新琴似六番通街づくりクラブ(以下、街づくりクラブ)」は、まちづくりを目的に、1993年に発足しました。
まちづくりに必要なことは、「地域を知ること」と、「人のつながりをつくること」と考え、まず最初に、小さなグループをたくさんつくって、まちを探検することにしました。 地域を歩きまわって見つけたのが、六番通と並行して走る延長3kmの「防風林」でした。
「防風林は、突然現れたわけではなく、まちの中にずっと昔からありました。でも、それまでは存在を意識していなかったんです」と、アドバイザーの秋山忠継さん。
探検した住民たちからは、「防風林を生かしたまちづくりをしたい」、という意見が出されました。
「80年くらい前に植えられた防風林の樹が、今も地域に受け継がれている。防風林の存在が、世代にわたって緑を残すことの意味を教えてくれた。自分たちも次世代に緑を残したい」、と考えたのです。
それでは、探検に参加しなかった住民たちは、どんなふうに考えているのだろう? 新琴似六番通をどんなまちにしたいのだろう? 街づくりクラブでは、次に住民アンケートを実施しました。アンケートの結果は、「冬に快適なまち」、「景観を生かしたまち」にしたいというものでした。
その結果を生かして、防風林と六番通を緑でつなぎ、緑の回廊をつくろうという構想が生まれます。

==防風林のこと==
防風林は、新琴似地区と屯田地区の境にあり、「屯田防風林」(ポプラ通中央緑地)と呼ばれています。当初は耕地を守る目的でつくられました。当時の新琴似地区は大根畑が広がっており、「新琴似大根」は、この地域の名産でした。
1955年に札幌市と合併してからは、札幌市のベットタウンとして宅地化が進みます。耕地を守るという役割を終えた防風林は、市民の働きかけによって、健康保安林として生まれ変わりました。現在では、遊歩道が設けられ、市民の憩いの場となっています。環境教育の実践の場としても活用されています。
「みんなで創る花壇」
一方、新琴似六番通では、慢性的な渋滞や環境悪化を解消するために、拡幅工事が検討されていました。街づくりクラブでは、流雪溝の設置や、歩行者・自転車のためのスペースづくり、早期の工事着工を札幌市に求めていました。
1999年からは拡幅のための用地買収が、2006年からは工事が始まります。工事が進むに従って、買収された用地のうち、道路脇のスペースが、鉄柵で囲われて、空地として残されるようになりました。街づくりクラブは、その空地を花壇にすることを札幌市に提案します。
街づくりクラブには、花と緑のボランティアグループ「花くらぶ」があります。地域に住む花好き、庭づくり好きの人であれば、誰でも自由に参加することができます。
「花くらぶ」は、拡幅工事によって出来た空地に「みんなで創る花壇」をつくります。通りすがりのだれでもが、好きな時に、好きな方法で、参加できるという花壇です。現在、六番通沿いに3ヶ所設置され、それぞれの花壇には、地域の人に参加を呼びかける看板が掲げられています。
このほかに、行政と住民、専門家が一緒につくる「コミュニティ・ガーデン」も3ヶ所生まれました。

『みんなで創る花壇』(看板に書かれている呼びかけ)
どなたでも花壇づくりにご参加ください
どなたでも都合がいい時に水をやってください
どなたでも都合がいい時に草をむしってください
どなたでも花の種類、デザインなどご提案ください
一人ひとりの取り組みが街をつくる
「花くらぶ」では、花壇づくり以外にも、個人が自宅でできる取り組みとして、「一木一鉢運動」や、「他人に見せる庭づくり」などを呼びかけています。
秋山さんは「自宅を花や木で飾ると、近所づきあいが生まれる、ガーデニングが社会参加になる」と語ります。
「庭に1本の樹を植える、それが難しければ、ベランダの鉢植え。窓辺の切り花でもいいんです。面白いからと、自分のためにしていることの楽しさが周囲に伝わって、広がっていく。一人ひとりが、ばらばらに取り組んでいることでも総合的にみると街を変えていくことになるんです。」

まちのビジョンは住民がつくる
街づくりクラブでは、2004年12月に、「六番通地域街づくり憲章」をつくりました。
1)愛着と誇りの持てる個性的な街?「住みごたえのある街」、
2)防風林を守り緑豊かな「いい風景のある街」、
3)人にやさくしく、人と人がつながり、人と花・緑が調和する「リラの花咲く街」、
を目指すという内容です。
街づくり憲章を提案した秋山さんは、東川町出身です。30年ほど前、30歳の時に新琴似に越してきました。
「子どものころは、隣近所の人と仲良くするのが当たり前。札幌でも仲良くしたかった」という秋山さん。
「新琴似は、あちこちからやってきた人たちで形成される地域なので、住民のまちへの愛着が薄い。だけど、子どもたちにとっては故郷。校舎から見える防風林などの緑が故郷の景色になるようにしたい」と語ります。
行政から働きかけて、「住民参加の街づくり」をするのではなく、住民から働きかけて行政を巻き込んで、「行政参加の街づくり」をしたい、まちのビジョンを市民が提案したい、とも考えています。
ガーデンの語源は、ヘブライ語の「gan=囲い」と「eden=楽しみ・喜び」。防風林を生かしたまちづくり、「みんなで創る花壇」「一鉢一木運動」などを通じて、住民同士のつながりを大切にしながら、六番通を、木々の緑に囲われ、花や緑で彩られたガーデンにしたいそうです。
新琴似六番通街づくりクラブ
代表:大場隆明さん
事務局長:高橋博章さん
アドバイザー:秋山忠継さん
連絡先:TEL・FAX 011-762-5533(6番堂書店内/秋山)