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【団体紹介】花の会(南新川フラワーガーデン)

「花の会」は、高齢者自身による、高齢者の健康維持と相互交流を目指すまちづくり活動です。会の発足の経緯や、活動の内容についてお聞きしました。
(文責:都築仁美)
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 「高齢になっても、愉快に、健康に暮らしたい。」
 現在83歳の深田武男さんは、10年ほど前に、近所の仲間たち5?6名と、そんな話をしていました。高齢になると、外に出るのが億劫になって、家に引きこもりがちの人が増えます。知り合いも少なくなり、健康にも影響します。そんな状態を、自分たちの手で防ぎたいと考えました。少子高齢化が進む現在、高齢者が元気に活躍することで、まちに活力が生まれるだろうとも思いました。

 一方、近所には、道路脇に220平方メートルの空地がありました。「草花を嫌いな人はほとんどいない。みんなが好きなものに取り組むのが一番」と、深田さんたちは、草ぼうぼうになっていたその空地を、札幌市と協議の上、花壇として整備することにしました。

 1999年10月、24名の発起人が集まって「花の会」はスタートします。まずは、空地の開墾からです。樹の根っこを掘り起こし、みんなでお金を出し合って花壇づくりをはじめました。

 2000年の春先に、種から苗を育てる講習を行います。意気込みはあっても、ほとんどの人たちにとっては初めての取り組み。1000粒の種から200本の花を育てることがやっとでした。難しい活動をはじめたことを悔やむ気持ちも生まれました。
 でも、2001年からは、より慎重に取り組むこと、そして慌てないことを確認しあって、花壇づくりを継続していきます。同時に、必要な設備を整えることに多額の費用がかかることも知り、「北区まちづくりコンテスト」に応募します。応募は、専門家からの有益なアドバイスを受けるきっかけになり、みんなのやる気が生まれてきました。

 現在では、花を眺めながらお喋りを楽しむこともできるようにと、花壇の脇に組み立て式のあずま屋を設けました。花壇の真ん中には通路が走っていて、両脇に咲き乱れるブルーサルビアやケイトウ、マリーゴールドなど、鮮やかな色彩を眺めながら歩くことができます。車いすでも通れるようにと配慮して設けられたその通路は、高齢者ならではの人にやさしい設計なのかもしれないと、感心してしまいます。

南新川フラワーガーデン

 近所の人たちからは、「花壇をみると気持ちが晴れる」という声が聞こえています。近くのパークゴルフ場に来た人が、「私もやりたい」と新たな仲間として加わってくれることもあります。自宅の枯葉を花壇に持ってきて、堆肥としてすき込む人もいます。

 活動の担い手は、60?70代が中心、ほとんどが近所に住んでいますが、2?3kmはなれた場所から、自転車に乗ってやってくる人もいます。3名程の仲間のうち、4?5割は、発足当初から関わっているメンバーです。新しい仲間はクチコミで増やします。

 活動を継続していくには費用がかかります。会員から年間1,000円の会費を集めるほかには、自分たちで育てたサルビアやブルーサルビアの苗を、個人や企業に販売したりしています。近所の公園の管理を請け負って、そこから得る収入もあります。
 以前は、不用品を持ち寄って、活動に協力的なスーパーの敷地を借りて、フリーマーケットを行なっていました。貴重な収入源でしたが、今年からはやめることになったので、あらたな収入源を探しているところです。

 活動の継続には、費用以外にも大切なことがあります。仲間同士のつながりや、技術の伝達と向上です。そのための工夫として、年に1?2回は、バスを借り切って、景色のいいところへと日帰り旅行をしたり、講習会を開催したりしています。これまでの活動の経験を「素人の花壇作りマニュアル」にまとめて、ノウハウを会員同士で共有しています。

 「最近では、1000粒の種から、700本の花を咲かせることができるようになった」と、深田さん。地域の人の喜びの声に励まされ、会員が創意工夫して努力した成果です。

 代表の深田さんは、以前は土建業に従事していました。一方で、ずっと長い間、絵を描き続けてきました。「びんぼう絵描き」と自ら称する深田さんは、絵のセンスを活かして、花壇の植栽をデザインしています。「素人の花壇作りマニュアル」の挿絵も深田さんによるもの。さらりと描いているようですが、あたたかみのある素敵な絵です。
「絵描き」としての顔を持つ深田さんは、ずいぶん前に仕事でカンボジアを訪れた際に、アンコールワットに魅せられてしまい、以降、カンボジアの絵ばかり描いているそうです。個展を開催することもあります。

代表の深田さん。自作のカンボジアの遺跡の絵と一緒に。

 生き生きとした深田さんと話をしていると、人とのつながりの中で生きること、大好きなことに取り組み続けることが、健康維持の秘訣であることを実感します。
 「花の会」の活動とその担い手の生き方から、豊かに生きる方法のヒントが伺えます。

花の会
代表:深田武男