マザーツリーの話。

本日は、ちょっと長め。物語仕立てでお送りします。
昔、モエレ沼公園を作っている頃の話。
ゴミの埋め立ても終わり、毎年たくさんの樹木を植えて大きな森を作ろうとしていました。
ところが公園の回りは石狩平野が広がり、風や寒さで樹木はどんどん弱って行くばかりか、気候に負けて樹木が次々と枯れ始め、樹守の人も困り果てていました。今はプレイマウンテンの麓に小さな樹が生えてきました。
樹守の人が「こんな所に誰が植えたんだろう」と、その樹を見に行くと・・・。
太い杭のような物が土の中から顔を出して、先端から数本の枝が伸びて細長い葉っぱが数枚、風にひらひら揺れていました。良く見ると、プレイマウンテンを作るのに持ってきた土の中に混ざっていた、杭か何かの木から根が出て来たもののようです。
「これはいったいどうしたわけだろう。」、どんな樹木を植えても弱るばかりなのに、根も枝も何もついていない1本の杭から、根が出て枝が出て、葉っぱが茂り始めたのです。樹守の人はしばらくその木の回りを調べてみました。でも、どれほど調べても、その木がどこから来たのか、どうして育っているのか何もわかりませんでした。それで樹守はその木を大切に育てようと思いました。そこで一緒に仕事をしていた仲間にプレイマウンテンの麓で見つけた不思議な木の話をしました。仲間もその木を見て、こんな場所で一生懸命生き抜こうとするのに驚き、その木を抜かずに様子を見ることにしました。
一回、二回、そして三回もの厳しい冬を越えると、誰もが枯れてしまうと思っていたその木は、周囲に植栽された桜や針葉樹よりも大きな樹となり、こんもりと丸く茂った枝葉は公園のどこからでも見ることが出来るようになってきました。
そしてもっと不思議なことに、その樹が大きくなると、公園の樹がどんどん元気になってきたことです。まるでその樹に守られているかのように、春になると桜も次々に花を咲かせるようになり、夏になると他の樹木も枝を左右に広げ始めました。
それでいつしか樹守とその仲間の人たちは、その樹を「マザーツリー」と呼ぶようになりました。
公園の全ての生き物を見守り、育ててくれる母のような樹木という意味です。
今では根元は大人2人が両腕を回してようやく届くほどに太くなっています。公園で一番厳しく雨風や吹雪のあたる場所で、何十年も立っているかのような大きく力強い生命力で、公園で生きている命あるものを守り続けています。
ちなみに、マザーツリーとしている樹木は「ウンリュウヤナギ」で、中国原産のヤナギの仲間。
ヤナギやポプラは根が出やすく、杭などにして地面に打ち込むと、そこから根が出て枝が出て、数年もすると並木になることが知られています。
ただし、モエレ沼公園の場合は、そのようなヤナギですら次々と枯れてしまう状態であったため、非常に驚かされたのです。
当時植栽された桜は全て枯れてしまい、その後に防風植栽でアカエゾマツやドイツトウヒを植栽しましたが、その時はウンリュウヤナギを抜かないように造成を続けたのです。